生産者のこえ

2014-07-11
まゆみ農園 真弓一保さん<第3話>

たつやのにんじん 箱詰め

 

保管用冷蔵庫で品質アップ。B級品もどんどん売れる。

真弓:ちょうど人参の注文が増えても対応できるように、機械化をしていったという状況も タイミングが良かったです。オイシックスの授賞式の懇親会で、商品管理の方から 「消費者の所にきれいな状態で到着しますもんねえ、喜ばれます」って褒められました。 確かにそういうのとか、日持ちするのも喜ばれてるのかも。

森田:日持ちするのは、管理がいい証拠。収穫後、すぐに冷蔵庫に入れて収穫熱をとるだけで、 随分と持ちがよくなるんです。なんといっても食品製造業の品質基準で作った工場だから。 真弓さんが「真冬でも人参を冷やさなきゃいけないの?」とか文句言いながらでも 僕の言う通りにやってくれたでしょ。それがつながってるんですね、お客さんの信頼に。

眞弓:そうそう、それはありますよね、確かに、

森田:これだけのものを農家さんにやれって言ったら、まず最初から「いいえ」ですよ。 でも僕は前に、食品業界で仕事しているから知ってるんです。冷凍食品の衛生基準は、 ものすごい厳しいからね、もう半端じゃない。でもそれを今冷凍食品工場はクリアしてるから、 1年に一回くらいしかクレームは起こらないという話です。

眞弓:やっぱり、これからの農業は食品加工の業界と一緒なんだよね。

森田:温度と湿度管理ができる冷蔵庫で保存するようになって、作業内容がどんどん変わっていってますよね。 1ヶ月とか2ヶ月とか余裕で鮮度を維持できるから、天気がよかったら掘れるものは掘っていまえばいいわけ。

真弓:それまでは、できた作物はそのつど出荷してお金に換えていたから、売る分だけ人参を掘っていたし、 生産性も低かったんです。森田さんから言われても、自分の発想を切り替えるのに1年半くらいかかりました。

森田:真弓さんも職人気質で頑固だから(笑)

真弓:喧嘩になるんですよ(笑)。結局は、説き伏せられるけど(笑)

森田:今でもそうなんですよ、僕は新しい発想で話すので、最初はえっという話になる。それでいつもバトル。

真弓:最近は、だいぶなくなりました(笑)

森田:この水準まで来たらあと一歩なんですよ。二人で約束したのは、年商1億。その目標で 設備を造ったんだから。まあでも予測より販売量が多くなったから、在庫に回せないという状況。 30坪の冷蔵庫が必要だったね。

真弓:そうそう。1ヶ月ももたないんですよ。

森田:だってね、貯蔵すると、よそは無くても、ここにはあるからわぁーって注文が来るでしょ、 しかも美味しい。それで売り上げが伸びた。真弓さんはこれまでの仕事を変革させなきゃいけないから、 一時期はパニックになったけど、冷蔵庫によって収穫した人参は100%ロスなく販売できるように なったというのは大きいです。

真弓:今まで捨てていた人参も買いとってもらえるわけだからね。

森田:型崩れの品は、普通の市場では受けないんだけど、真弓さんの人参はそういう品でも 味がいいから買いたいという話になって、あれもかなりの金額になるもんね。

真弓:そうそう、すごいです。

森田:採れた作物をすべてお金に換えると農家さんは儲かるんです。要するに傷物でもなんでも 1円でもいいから売れれば、農家さんにはお金が残るというのはこれまで観察していてわかったので、 それでB品を受けてもらえないかとオイシックスさんにもお願いしたんです。 半値だろうと1/3だろうと残る、純利益です。それを全部真弓さんがやってくれた。感謝です。 お互いを信じて喧嘩しながらね、真弓さんはもうクタクタよ(笑)。

真弓:クタクタですよ。ほんとに(笑)。5、6年前からかな、ガクッときました。 フル回転で雇用も多くなる、手を抜けないから身の危険を感じた(笑)。最近、去年ホームステイ先から 長男が帰ってきたり、娘の応援もあって、楽になった。ちょっと余裕が出てきたんです。

森田:それでね、今ゆったりしてるんです(笑)。

真弓:はっきり言うんだから(笑)。

森田:真弓さん、いつの間にか地元の名士になってますね。町や市や県のニュースで取り上げられて有名ですよ。

真弓:いやー、思いもかけない展開ですよ。    


2014-07-11
まゆみ農園 真弓一保さん<第2話>

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「人参で金賞!?」。 ネーミング、流通まで含めた農業ビジネスを。

森田:真弓さんの人参は、勉強会を始めて数段に品質が良くなったんです。 ある時、決まっていた売り先がダメになったことがあって、僕が何社かにアタックした。 そこでオイシックスさんに出会いました。最初は鳴かず飛ばずでしたけど、 真弓さんの人参は生協でも出回っていたから、名前をかえようって話になった。で、番頭格の 達也君の名前がいいねってことになって、「たつやのにんじん」というのを僕が考えついたんです(笑)。

眞弓:そう、そう(笑)。

森田:名前がついた辺りからリピートが入りだしたけど、保存用冷蔵庫があるから欠品の心配もない。 それで売上げが伸びるもんだから、オイシックスさんがサービスセットに入れ出した。そしたら 勢いがとまらなくなって、今じゃ前年対比2割増しだもんね。

眞弓:そう、今は、出荷制限しています。

森田:「たつやのにんじん」って固有名詞になったもんだから、みんな飛び着いちゃった。しかも食べたら美味しい。 だから、人参が金賞とっちゃった (笑)。

眞弓:人参で、こんなに評価を受けるとは思ってなかったです。

森田:B品をどうやってお金に変えるか、それが僕の大きなテーマだったんです。市場価格原理からいったら、 B品は全然相手にされないでしょ。でもオイシックスさんでは、これなら許容範囲という B級品に値段を下げて売ったら、消費者は「ジュース用は、これでいいや」ってなっちゃったわけ。 今まで通り、美味しい「たつやの人参」が安く買えるわけだから嬉しいよね。 それと、朝、美味しい野菜でフルーツジュースやスムージーを朝食がわりに飲む人が増えたでしょう。 それもあって、ずーっと右肩上がりの伸び方をしてるんじゃないですかね。B級品もそれなりの値段で売れるから、 忙しいのは大変だけど嬉しいじゃないですか。

真弓:そうだね。

森田:もう一つ追い風になったのは、2歳とか3歳の子どもさんがそのまんま丸かじりするんだって。 おやつ代わりに「たつやの人参」をカリカリカリって。お母さんも楽しくなっちゃってまた注文(笑)。 同じような人参があっても、みんな「たつやの人参」を指名買いしちゃう。

真弓:子どもの声がいちばんだよね。     ic_foot_facebook


2014-07-05
まゆみ農園 真弓一保さん<第1話>

「たつやのにんじん」Oisix金賞受賞!

「たつやのにんじん」は、有機野菜などのネット通販企業「Oisix(オイシックス)」の 不定期刊行物[VOICE]にも掲載されました。 oisix発行 VOICE たつやのにんじん特集  

Oisix(オイシックス)金賞を実現したふたりの出会い

森田: 真弓さん、Oisix(オイシックス)の金賞受賞、おめでとうございます。 私も授賞式に行かせていただいて本当に誇らしく思いました。

真弓: 森田さんとの出会いは、野菜の輸送における鮮度保持の講演会に私が参加した時ですから、もう10年くらい前ですか。 森田さんは農業にえらい詳しくて面白いなあという印象。でもしばらく何も交信はなかったよね。

森田: 鮮度保持の話で真弓さんも所属されている「どんぐり会」に来るようになって、栽培の勉強会をした、 それからですね。

真弓: そう、道の駅で一緒に昼食を食べてそれから始まった。それまでは、他人だった(笑)。

森田: 私が講師をする栽培の勉強会の幹事を真弓さんにお願いしたんです。

真弓: 毎月1回2時間半を3年間。よく続いたよね。

森田: 最初は17~18人だったのが最終的には25人まで増えたんですよ。

真弓: それで森田さんが月で栽培する太陰暦の話で潮の満ち引きとか話してた。 科学的な話ならいいんだけど、森田さんの話は潮の満ち引きばかりで、さっぱりわからなかった(笑)。

森田: 結局、残った中で一番優等生が真弓さん、全部で5人ぐらいですよ。だだね、不思議だったのは 勉強会の時に畑を見てアドバイスするんですよ、私が。すると普通の農家さんは、そんな話をしても 半信半疑なんで実践してくれない。でも真弓さんは、きっちりやっている。そういう意味で、普通の農家さんとは 違うなというのはありました。

真弓: ある時、森田さんに冗談のつもりで、俺も保存のための冷蔵庫を作りたいと話したら、 政府の3割補助資金でやれってけしかけられて (笑)。当時の畑は、今の半分くらい、4ha2作くらいだったかな。

森田:農協を通さずに国の資金を直接農家に渡す試みがあって、真弓さんが選ばれちゃった。

真弓: 今まで個人的に3割の助成金が出ることはなかったんです。3人以上でないと国からの助成金は出なかった。 3割もただで貰えるから使わない手はないなと思ってね。

森田: それで冷蔵庫を作るなら、今の5〜6倍の物でないと面白くないって話をした。

真弓:倉庫の設計図を作ったら、これじゃ狭くて動けないなって話になったんで、 畑をつぶして新しく建てることになった。

森田: 僕がイメージするプランを全部織り込んでもいい?と聞いたら、いいよってポンと引き受けてくれた。 それが今までの農業の発想じゃない。工場に壁をなくしたのも、使ってみるとスペース以上に有効に動けるから 便利なんだけど、冒険でしたね。

真弓: かなり広く作ったつもりだけど、この3年で狭くなった。

森田:急成長してるもんね、真弓さん。